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アウトサイダーアートの巨匠 ヘンリー・ダーガーとはどんな人物だったのか 【アート・アーティスト紹介】

アウトサイダーアートの巨匠 ヘンリー・ダーガーとはどんな人物だったのか 【アート・アーティスト紹介】

はい!皆さんこんにちは!
今回YouTubeチャンネル「ExpotionTV」ではアウトサイダーアーティストを代表する作家ヘンリー・ダーガーを取り上げました。
動画を見て無い方は是非ご視聴お願いします!良かったらチャンネル登録もしてくれたら喜びます!!

ヘンリーは誰に見せるわけでもない作品を半世紀以上に渡り制作し続けました。
そんなヘンリー作品の魅力は何なのでしょうか?

略歴年表 Story of Henry Darger

1892年 イリノイ州シカゴで生まれる
父親は服の仕立て屋でした。
非常に優しい性格でヘンリーにとっての心の支えでした。

1896年 母と死別
妹の出産時に母が死去、妹は生まれてすぐ養子にだされたので
ダーガーは一度も妹には会った事がありませんでした。

1900年 カトリックの少年施設へ
体調を崩してしまった父親はカトリック救貧院に入る事になってしまいます。
その為にへンリーも少年施設へ入る事になります。
ヘンリーは後にこの施設の様子を強制労働の場のように描いています。

1905年 父の死去
この年ヘンリーは心に障害があると診断され、リンカーン精神薄弱施設へ移されます。
しかしこれは誤診で、問題ばかり起こすヘンリーのやっかいばらいだったと言いわれています。

1922年 グラント病院で働く
施設を脱走したヘンリーはシカゴへ戻るとカトリック病院の清掃員として働き始めます。
この仕事は以降退職するまで続きます。

1932年 ウェブスター通りの貸間へ移る
この場所で40年間、密かな制作を行って行く事になります。

1966年 仕事を強制的に辞めさせられる
73歳で仕事を辞め、この時に自伝を執筆しています。

1972年 父と同じ救貧院に入る
年老いて階段の昇り降りもできなくなってしまったヘンリーは、
大家のネイサン・ラーナーにカットリック系の老人施設に入れてくれるように頼みます。

1973年 死去
1972年に父親と同じ聖オーガスティン・ホームに移り、翌年1973年4月13日に亡くなりました。81歳でした。

制作者としてのヘンリー・ダーガーの話はここから始まります。
死後、遺品の処理をたのまれていた大家のネイサン・ラーナーはダーガーの旅行鞄の中から1万5145ページに及ぶ
ファンタジー小説『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、
子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』の原稿とその物語りを説明する大量の絵を発見します。
以後ネイサンは亡くなる1997年までダーガーの遺作を保管、美術関係者研究者を招き作品の真価を問い続けます。

その後、2001年にはアメリカン・フォーク・美術館にヘンリーダーガー・スタディー・センターが設立され研究が進みます。
そして2012年にはニューヨーク近代美術館とパリ市立近代美術館にまとまった作品が収蔵される事になります。

見ての通りダーガーは作品を発表する事はいっさいしませんでした。
荷物の整理を頼まれたネイサン・ラーナー自身が写真家、デザイナーであったことが幸運で偶然的に作品は世に出る事になります。

作品『非現実の王国で』

ヘンリーの絵は自身が密かに執筆していたファンタジー小説『非現実の王国で』の挿絵として制作されています。
物語の内容はグランデニリアと呼ばれる奴隷制度をもつ軍事国家とアビエニアと呼ばれるカトリック国家との戦争を描いた架空戦記です。
アビエニアを率いる7人の少女戦士ィヴィアン姉妹を主人公に彼女達の困難をのりこえ勝利する奮闘が描れています。

手法

美術教育を受けていないヘンリーの絵はゴミ捨て場から拾ってきた宗教画、新聞、広告等を使い、そこから女の子の絵を切り抜き
トレーシングして彩色したり、コラージュを用いて制作されています。

世界観

ヘンリー作品の世界観は、死後彼の部屋から発見されたオズの魔法使いや不思議の国のアリスなど少女冒険譚、
キリスト教関連の史実や南北戦争、奴隷制度などが元になってると言われてます。
そこにヘンリー自身の体験や疎外感、反映されていると思われます。
彼自身が経験した母との死別、父親の死、施設での虐待、強制労働、虐待、脱走がキーワードになっていると思われます。

作品の魅力

ヘンリーの作品の魅力は
牧歌的な可愛らしいさのなかに拷問や大虐殺、恐ろしいシーンが混沌と描かれてる点です。
変わり者が描いた虚構世界に過ぎないと言えばそうかもしれませんが、作品には南北戦争と奴隷制、アメリカの歴史の歩みが確かに内在しています。
そこにアートとしての価値が生まれているのではないでしょうか?

創作とは何なのか?

ヘンリー・ダーガーの作品をみていて思うのは『創作とはそもそも何なのか?』です。
ヘンリー自身、自分の事をアーティストだとは思っていなかったと思います。

だとするならヘンリーにとっての創作とは何だったのでしょうか?

彼にとっての創作とは現実逃避だったのではないでしょうか?
言い換えれば過酷な現実から身を守る為の防衛行為だった。
生きて行く為に別の世界を作ってしまたのだと思います。

昔どこかで「創作とは恥ずかしい物だと」書かれているのを読んだ事があります。
作品には自分の思考や普段は表にでない自分が反映されています。
それをおおっぴらに世間に公表するのですから、考えてみれば確かに恥ずかしい行為かもしれません。

ヘンリーはネイサン・ラーナーに持ち物の処分を問われた時「捨ててくれ」と答えました。
もしかしたら彼も自分の創作物を黒歴史的恥ずべき物だと思っていたのかもしれません。

ただし創作自体に救われる事もあります。
作る事で人生を続られると考えるなら、豊かな行為だとも思います。

ヘンリー・ダーガーの作品は「創作とは何か?」を問うていると私は感じました。

Yuki Izumi
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画像元:NY近代美術館
https://www.moma.org/artists/28600#works