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孤独の視点 アメリカ絵画の巨匠エドワード・ホッパー【美術解説・アーティスト紹介】

 孤独の視点 アメリカ絵画の巨匠エドワード・ホッパー
【美術解説・アーティスト紹介】


はい!皆さんこんにちは!
今回YouTubeチャンネル「ExpotionTV」ではエドワード・ホッパーを取り上げました。
動画を見て無い方は是非ご視聴お願いします!良かったらチャンネル登録もしてくれたら喜びます!!

エドワード・ホッパーはそれまで描かれなかった現代アメリカの生活を描いた作家です。
ホッパーの活動した時代は抽象画全盛期でした。
しかしホッパーは具象絵画の伝統に生涯かかわり続けました。
そんなホッパーとはどのような人物で作品の魅力は何なのでしょうか?

略歴年表 Story of Edward Hopper

1882年アメリカのナイアックで生まれる
幼少の頃は本と船が大好きな少年でした。
同世代の子供達に比べとても背の高かった為、他の子供達の輪には加われませんでした。

1900年NY美術学校でロバート・ヘンリに学ぶ
ここでホッパーはゴヤ、ベラスケス、マネ等、写実主義の画家達の作品に触れます。
この経験は後にアメリカの日常を主題に制作するきっかけになりました。
しかし最初は画業では生計を立てられず、画家ではなく広告代理店のイラストレーターとしてスタートします。

1906年念願だったパリを訪れる
仕事で貯めたお金と両親の援助をもらい念願だったパリを訪れます。
当時の前衛芸術家たちの活動には興味を示さず、かわりに印象派の光の効果に興味を持ちます。

1909年再びパリへ
アメリカに戻ったエドワードは定期的に展覧会への出品を始めます。
しかし絵はまったく評価されることはありませんでした。

1913年アーモリー・ショーで絵が売れる
しかし依然として画家として生計をたてるのは難しい状況でした。

1924年水彩画が評価される
こつこつと制作を続けた彼に転機が訪れます。
夏のスケッチ旅行で描いた水彩画がブルックリン美術館で行われた展覧会に入選します。
続けて開いた個展が成功、42歳にして画業に専念する事になります。
またこの年同じく画家であったジョセフィーン・ヴァスティール・ニヴィソンと結婚します。
転機をもたらしたジョセフィーンは、ホッパーにとっては幸運の女神といえるかもしれません。
この後に開いた展覧会も成功、どんどん名声を高めて行く事になります。

1934年ケープゴートにアトリエを建てる
エドワードは夏の大半をケープゴートのアトリエで過ごしました。
成功のおかげで好きな旅行を楽しむことができました。

1935年ペンシルベニアアカデミーからメダル授与される
辞退したものもありますが、多くの賞を貰う事になります。

1950-1964年各地で回顧展が開かれる
名声と安定した収入を得た後もけして派手な生活を送る事もなく、シンプルで質素な生活を好みました。

1964年アトリエで死去
十ヶ月後に妻のジョセフィーンも死去、エドワードと一緒に埋葬されました。

ホッパーはかなり遅咲きの人です。
若い頃はなかなか成功せず無気力に悩まされる事もありましたが
腐らず制作を続け成功します。

なにより成功に溺れる事もなく、生活はいたってまじめだった所にも好感が持てます。

他の派手なアーティストに比べれば凡庸な人生と言えばそうかもしれません。
しかし「地道に続けてさえいればいいんだよ」と言われているようで、ホッパーの生き様や作品は観ていてちょっとほっとします。

作品テーマ


ホッパーの作品のテーマの中心は都会生活の中に潜む孤独や空虚感といわれています。
またホッパーは非常に構図や配置に優れた画家でもありました。

光と影

ホッパーは光と影に興味を持っていました。
光と影の描き方はホッパーの絵の特徴の一つです。

題材の選択

ホッパーはどこかに出掛けて主題をさがすのが好きな画家でした
ハイウェイから見た風景やモーテルなどが題材になってるのはその為です。

孤独感

ナイトホークスはホッパーの代表作です。
グリニッジットアヴェニューにあるレストランにヒントを得て描かれた一枚です。
ホッパーは作品に対して多くを語る画家でありませんでしたが、この絵に関してはめずらしく語っています。

「夜の街路で、とりわけ寂しいということは思わなかったんだが
情景をうんと単純化して、レストランをより大きく描き
おそらく無意識で大都会の孤独を描いた」

絵の中に感じる孤独感はホッパー作品の大きな魅力です。

物語性

この絵についてホッパーはただ単に白に黄色をほとんど混ぜずに
日の光を描こうと試みたに過ぎないとホッパーは語ります。
しかしホッパーの絵には映画の様な物語性があります。

エドワードホッパーの孤独な視点

ホッパー作品に感じる孤独や空虚感、物語性はどうして生まれるのでしょうか?

確かにホッパーは妻のジョセフィーン以外の人間と深く関わる事をしませんでした。
ただ彼が常に孤独や空虚感を感じていたかは疑問です。

とは言え、ホッパー作品の最大の魅力は孤独と物語性です。
そこにはホッパーの視点が大きく関わっています。

彼の被写体を見つめる目は、あくまで一人称な傍観者の視点です。
ホッパーは目撃した情景をただ純粋に描いたに過ぎません。
それは誰しもが普段なにげなく見ている情景や日常の場面の切り取りです。
ここにホッパーの仕掛けたギミックがあります。

ホッパー作品に私たちが感じる孤独感は、私たちが日々感じている孤独感であり。
物語性はあくまで私たちが作り出した想像上の物語です。

大概の人が抱いている感情、目撃している物語なのです。
そしてこれが観覧者に強い共感を呼び起こさせる理由です。

残念ながらエドワード・ホッパーの作品を日本でまとめて見る事は出来ません。
大規模な展覧会が開かれることも現時点ではなさそうです。
現状、本物を見ようとするならアメリカに行くしか術はありません。

今後、ぜひ日本で展覧会が開かれる事を期待したい。

Yuki Izumi

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画像元
https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Paintings_by_Edward_Hopper