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祈り、癒し 、人間とは何か? マークロスコの抽象絵画 【美術解説・アーティスト紹介】

祈り、癒し 人間とは何か? マークロスコの抽象絵画
【美術解説・アーティスト紹介】

はい!皆さんこんにちは!
今回YouTubeチャンネル「ExpotionTV」ではマーク・ロスコを取り上げました。
動画を見て無い方は是非ご視聴お願いします!良かったらチャンネル登録もしてくれたら喜びます!!

マークロスコは抽象表現主義を代表する作家の一人で、ジャクソンポロック
バーネットニューマン等と共に時代を牽引しました。

今日はマークロスコとはどんな人物だったのか、作品の魅力は何なのか考えて行きたいと思います。

略歴年表 Story of Mark Rothko

1903年帝政時代のロシアで生まれる
ユダヤ人は当時のロシアでは差別されており、ユダヤ系のロスコは常に恐怖とともに幼少期を過ごしました。

1913年アメリカへ移住
兵役から逃れるため一家はアメリカに亡命する事になります。
しかし同年に父が突然亡くなってしまいます。

経済的に苦しみますが、なんとか働きながら進学します。
かなり頭の良かったロスコは4カ国をあやつりました。
またこの頃に積極的に討論を行い政治議論や討論のスキルを身につけました。

1921年奨学金を得てイェール大学に進学。
翌年には奨学金を打ち切られてしまい、退学してしまいます。

1923年ニューヨークに移住、画家を志す決意をする
たまたま友人の通う美術教室に行った事をきっかけに画家になる事を決意します。

1925年美術大学でアシール・ゴーキに学ぶ
この時に初めて前衛芸術に触れる事になりましたが
過度に口出しをするゴーキの授業のやり方には否定的でした。

1929年ブルックリン・ユダヤ・センターで授業開始
子供達を対象に絵画、彫刻の授業を始める。
この授業は1952年まで続きました。

またこの頃ミルトン・エイブリーに出会います。
エイブリーの色彩と形態に体する深い知識はこの頃のロスコに大きな影響を与えました。

1932年妻となるエイデル・サッチャーに出会う
5年後には別居、後に和解するも関係は緊張したままでした。

1933年初個展
この展示は教え子の子供達の作品と一緒に展示するという非常に珍しいものでした。

1935年The Tenを結成
このグループの目的は「アメリカ絵画と創造性のない絵画とを同質であると見なすことに抗議する」ことでした。

1938年アメリカの市民権を得る
ヨーロッパで猛威を振るうナチスの影響力はアメリカにもおよびます。
ユダヤ系アメリカ人が国外追放になるのではないかという思いにかられ、またしても不安に脅かされる事になります。

1940年マーク・ロスコと改名
ロスコという名前はどこの民族にもみられない名前でした。

1943年離婚
作品は徐々に抽象芸術に向かう。

1945年メアリー・エレンと再婚
妻への求愛表現と思われる作品『海辺のゆっくりした旋回』を制作。

1951年15人のアメリカ人展を開催。
この頃からロスコの成功や出世に嫉妬したバーネットニューマンと対立、
古い仲間達との交友関係が崩れ始め徐々に孤独になっていきます。

1950年壁画等の大きな仕事に取り組む
ニューヨークのシーグラム・ビルディング
ヒューストンの教会(後のロスコ・チャペル)
ハーバード大学のための壁画の制作に注力

1968年大動脈がんで入院
晩年は大きな病気、孤独感、私生活のトラブルに苦しみます。

1970年アトリエで死去。
最後は自ら命を絶つ事になります。

マルチフォーム

1946年から1949年の4年間に制作された一連の作品をマルチフォームと呼びます。
ロスコ自身はこれを人間の表現を自己完結したものとして有機的な形態を地層のように重ねている と言っています。

ロスコのカラーフィールドペインティングの特徴は、下の色が透けるように薄く重ねて描かれていることです。
これは「絵画に身体が包み込まれる様な没入感を生み出す」要素の一つと考えられています。

この作品は一般的に後のカラーフィールドペインティング、ロスコ形式の過渡期的作品とみなされています。

彼の興味は人間ドラマを描く事でした。
不確定で様々な解釈が得られる様に、図像をあえて隠くす事による形の無い聖なる物を描こうとしました。
過去の具象的なモチーフを抽象化してるのではないか という話もありますが、私はそうではないと思っています。

ロスコは何を表現してるのか?

「私は基本的な人間の感情(悲劇、エクスタシー、運命など)を表現しているだけです。
人々の多くが私の作品に直面したときに、感情が揺さぶられて泣くという事実があるので、
私は基本的な人間の感情を伝えることができていると思っています。
私の絵の前で泣く人たちは、私が絵を描いたときと同じような宗教的な体験を感じています。
色彩の関係のみで美術を語る人は間違っています。」とロスコは語っています。

ではロスコの言う「人間の基本的な感情」とは何でしょうか?

ロスコ本人の感情でしょうか、それとも怒り、悲しみ、喜び等の特定の感情でしょうか。
決してそうではないと思います。ロスコの描こうとしたのは誰かのものでは無い「感情」そのものです。
絶対的な感情と言っても良いかもしれません。ここにロスコ作品の面白さがあります。

美術作品のレシピを提案

1950年以降の作品は色調がより暗く深い物になっていきます。
ロスコは自身の作品を構成する要素をレシピとして公開しています。

1:死に対する明瞭な関心がなければならない。命には限りがあると身近に感じること。
  悲劇的美術、ロマンティックな美術などは死の意識をあつかっている。
 
2:官能性。世界と具体的に交わる基礎となるもの。存在するものに対して欲望をかきたてる関わり方。
 
3:緊張、葛藤あるいは欲望の抑制。
 
4:アイロニー。現代になって加わった成分、ひとが一時、何か別のものに至るのに必要な自己滅却と検証。
 
5:機知と遊び心。人間的要素として。
 
6:はかなさと偶然性。人間的要素として。
 
7:希望。悲劇的な観念を耐えやすくするための10パーセント。

作品個々で含まれる割合は違いますが以上7つの要素でロスコの作品は構成されているそうです。

ロスコルーム

元々はシーグラムビルの壁画の為に制作された作品です。

ロスコは自分の作品が他の作品の横に並べられる事を嫌いました。
こうして作られたのが絵画鑑賞の為の環境「ロスコルーム」です。

この作品は全部で30点ありますが、世界中に散らばっています。
現在は日本の川村美術館とアメリカのワシントンナショナルギャラリー、イギリスのテートモダンで観る事が出来ます。

ロスコチャペル

ロスコチャペルは晩年ロスコのすべての力を注いだと言われる作品です。

3年を要して制作され、あらゆる人種・宗教の人が絵を鑑賞し、瞑想し、祈れる様になっています。
信仰の境界を越えて体験や経験をもたらすという考え方は実にロスコらしいです。

ロスコの作品の魅力

マークロスコの作品の魅力は作品に対峙した時に得られる精神体験そのものです。
ロスコはひたすら人間とは何なのかを作品に込めました。

そこには断定できない抽象があるだけです。人間の精神は不確定で形を一定に保つ事はありません。
ロスコは誰のものでもない不確定で豊かな精神を描き続けました。
結果的に絵画自体が深い精神性と多様性を宿す事になります。

ロスコの作品を観た時、人種、国籍、宗教、性別あらゆる境は関係なく、人間そのものの精神と向かい合う事になります。

ある人は喜びを感じるかもしれません、ある人は哀しみを感じるかもしれません、癒しを感じる人もいるかもしれません。
人によって受け取り方は違い、どれも間違いではありません。

ロスコの作品は一切の境界と否定が存在しない究極の多様性を宿した絵画なのかもしれません。

Yuki Izumi
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画像元:
https://www.wikiart.org/en/mark-rothko