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【西洋絵画の見方】知っておくべき鑑賞に必要な2つのポイント

【西洋絵画の見方】知っておくべき鑑賞に必要な2つのポイント

はい!皆さんこんにちは!
今回YouTubeチャンネル「ExpotionTV」では古典絵画の見方を取り上げました。
動画を見て無い方は是非ご視聴お願いします!良かったらチャンネル登録もしてくれたら喜びます!!

今回は古典絵画の見方第2回です。
前回はルネサンスから写実主義までの流れと特徴を説明しました。
よかったら前回の記事も合わせてご覧ください。

【西洋絵画の見方】特徴と時代の流れルネサンスから写実主義

では今日は実際にどう観たらよいのかを有名な絵画『受胎告知』を例に挙げて説明したいと思います。

鑑賞ポイントは以下の2つだけです。

  • 1.何が描かれているか知る。
  • 2.同じテーマで描かれた他の画家の絵と比べてみる。

西洋絵画の鑑賞に必要なポイント1

ルネサンス時代の有名な画家サンドロボッティチェッリの受胎告知という作品です。
キリスト教の聖書や福音書の内容を描いた、いわゆる宗教絵画というやつです。

受胎告知は天使ガブリエルがキリストを妊娠した事を告げ、それを聞いた聖母マリアがリアクションをとるシーンです。
これを知ってるか知らないかがまず第一のポイント「何が描かれているか知る」です。

具象絵画はまず何が描かれてるか知らないと理解できません。
別に悪いという訳では無いのですが、観たとしても色が奇麗とかそれぐらいしか感想も出てこないんですね。

具象絵画というのは「私も知ってますがあなたも知ってますよね」という暗黙のルールの上に成立しています。
この関係性が崩れてしまうとそもそも絵として成立しません。

宗教画は字の読めない人が多かった昔、聖書の内容を解りやすく説明する為の意味もあり描かれていました。
ですから当然お話の内容は知ってるでしょうの体で提示してきます。
とりわけ古典絵画にはギリシャ神話やキリスト教とか僕たち東洋人には馴染みの無い題材が多いです。
ここが取っ付きにくい点でもあるのですが、知れば知るほど色々な見方が出来て面白くなります。

だだこれだけでは不十分です。
次が今回の話で最も重要なポイント2「同じテーマで描かれた他の画家の絵と比べてみる」です。

西洋絵画の鑑賞に必要なポイント2

ボティチェッリの師で同じルネサンスのフィリッポリッピの作品です。
共通点もありますがこうして比べて観ると描かれてるモチーフが違いますよね?
リッピの作品には鳩がいたり左上の方に仙人みたいなのがいたりと同じ受胎告知ですがかなり描かれてる物が多いと思います。

古典絵画において登場するモチーフはそれ自体が特定の何かを象徴しています。
共通に描かれてるのが天使ガブリエル、百合の花、聖母マリアです。

天使ガブリエル
お告げを伝えるメッセッンジャー

百合の花
純潔を表します。
ここでは聖母マリアの象徴として描かれています。

聖母マリア
神の子イエス・キリストの母

基本的にこの3つがそろった時点で受胎告知になります。
描かれているモチーフの意味を知っていれば、タイトルを観なくても何をテーマに描いてるか解ったりします。

リッピの作品にだけ描かれているのが鳩、ガブリエル以外の天使、神様です。


近々お告げがある事を伝える精霊


この絵ではお告げがある事を伝える鳩をマリアの元に使わしています。
神様は一番偉いのに置物みたいに描かれてますが、本来この話には神様は登場しないので
リッピさん独自の演出です。

天使
神様を乗せてるのが上級天使ケルビムです。
ケルビムは4つの翼と4つの顔を持つ天使で、ここでは神様のお供として登場しています。

物陰から見守る天使
ガブリエルのお付きとして登場しています。
人間に近い姿からおそらく下位の天使と思われます。

この4つは本来はこのお話に登場しないモチーフなのでリッピさんの演出または違う記述を持ち込んだ可能性がある事が読み取れます。
こうやって見比べてみて違う点を探したり、それについて調べてみると知識が溜まっていきます。
得た知識を使って絵画を観返してみると一度観た作品でも違った視点や解釈で観る事ができます。
大筋の物語は同じですが細かい演出や解釈が違うんですね、古典絵画はこうやって楽しんでいきます。

違う時代の作品も見てみる

違う時代の作品を観るのも面白いです。
バロック時代の巨匠ルーベンスさんの作品です。
描かれているのはガブリエル、マリア、鳩、天使。
意味が解ってるのならどちらの表現が好きかを比べてみるのもいいかもしれません。
色彩が派手で明暗もくっきり、動的なポーズを付けたバロックらしいダイナミックな表現ですね。

もう一つ観てみましょうか。

19世紀の画家でロセッティの作品です。
天使に羽が無い、背景が病院の一室みたいだとか色々と突っ込みたい所がありますが
19世紀に入るとそれまでの大げさな表現をやめようとする動きが盛んになります。
ロセッティはあくまで自然なリアルを追求してこの作品を描きました。
ただそれが逆に多くの反感を買い、この絵は大批判を浴びてしまいます。
逆に不自然だと思われてしまったんですね。

個人的にマリア様の戸惑いや怯えた表情などよく描けてると思うのですが。
皆さんはどちらがリアリティーがあると思いますか?

まとめ

今回のポイントは2つです。

    1.何について描かれているのか調べてみる。
    2.気になった作品と同じテーマの作品を見つけて見比べてみる

時代や画家が違えば全然違った見え方がする、
気になった点をどんどん調べて行くと知識が溜まっていく。
さらに深く鑑賞ができて面白くなるという順番です。

この後お気に入りの画家が見つかればその人についてもっと調べても良いかと思います。

ここまできたらもう少し突っ込んで話してみます。
そんなに古い絵をそもそも観る必要があるか、どんなメリットがるのかのお話しです。
制作と鑑賞にわけて話しますね。

制作側:
1.技術の習得
どんな技法が使われて描かれてるのか分析して模倣すれば上達の近道になります。

2.新しい物の創造のヒントがある。
例えばサルバドール・ダリ
当時の新しい考え、思想に古典の技法やテーマ組み合わせ、全く新し視点を生み出した。

鑑賞側
1.作品の理解度や違う視点で観れる様になる。
ダリの様に近代や現代にも古い絵画の影響があるものがけっこうあります。
元になった絵を知っていれば作品をより楽しむ事ができます。
アートは過去の何らかの影響を受けてそれが繋がっています。
知識は多いほど面白いです。

さらに美術はその国の宗教、思想、経済、政治を反映しています。
より深く知れば自国や他国の歴史の理解にも繋がります。
上手く使えばコミニケーションツールとしての利用も可能だと思います。

はい今日は古典絵画の見方についてお話ししましたがいかがだったでしょうか
いっぺんには大変なので少しづつで良いかと思います。

文:Yuki Izumi


画像元:

サンドロ・ボッティチェッリ
フィリッポ・リッピ
ピーテル・パウル・ルーベンス
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ