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記号、手法、広告、大量生産と大量消費社会に生まれた新しい表現ポップアート 【美術解説】

記号、手法、広告、大量生産と大量消費社会に生まれた新しい表現ポップアート【美術解説】

はい!皆さんこんにちは!
今回YouTubeチャンネル「ExpotionTV」ではポップアートを取り上げました。
動画を見て無い方は是非ご視聴お願いします!良かったらチャンネル登録もしてくれたら喜びます!!

ポップアートは抽象表現主義の後ミニマルアートと並んで出てきたアートムーブメントで1960年代に流行しました。
大衆に馴染みのあるモチーフを使った作品で見た目的に大変親しみやすいアートなのですが、ではこのポップアートとはいったいなんなのかその本質はどこにあるのかを今日は見て行きたいと思います。

    本日のテーマ

  • ・ポップアートって何なのか
  • ・ポップアートの本質

1ポップアートの誕生

勘違いしがちなのですがポップアートはアメリカでは無く1950年代のイギリスで誕生します。

リチャードハミルトンの作品「一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか」がポップアート誕生の記念碑的作品と言われています。アメリカからイギリスに渡ってきた雑誌の切り抜きを使い作られたこの作品は当時のアメリカの消費社会を一歩引いた視点で批評する物でした。

2.大量生産と大量消費社会

イギリスで誕生したもののその背景にはアメリカの当時の文化、社会的影響があります。実質大戦唯一の戦勝国であった当時のアメリカは広告、マスメディア、雑誌、消費文化をシンボルに大量生産、大量消費のイケイケ、ウェーイ時代に突入していきます、世界的に戦後復興策の中心をになったアメリカの影響からこの流れはヨーロッパ、日本にも広まります。

3.アメリカポップアートの登場

世界的な経済、社会の流れの中心であったアメリカのアートの流れも当然ポップアートの方向になっていきます。それまでのアメリカ美術の主流は抽象表現主義でした。(抽象表現主義については別記事で取り上げていますのでよかったらそちらもご覧ください)

アメリカ発祥 前衛芸術 抽象表現主義とは【美術解説・アーティスト紹介】

抽象表現主義は描いているものは抽象的でありながらその根底には美術=崇高であるという古い美術の考え方があります。この美術=崇高という考えに反発する形でより大衆に理解の得られるモチーフを使った作品が登場します。

抽象表現主義からポップアートへの主流の移り変わりには一見して解りにくい抽象絵画よりコカコーラやコミック、当時のポップアイコンを全面に押し出した作品の方がよりアメリカらしいと考えた当時のアメリカ政府の意向も背景に垣間見えます。

4.ポップアートの特徴とマーケットのおける評価

ポップアートの特徴としてシルクスクリーン等の手法を使い大量生産をしてこれにより一見して複製の様なであった事が上げられます。ポスターみたいだと捉えられる作品は当然それまでの美術コレックターにとって最初は手の出しにくい物でありました。しかし非常に解りやすいイメージで一般大衆が購入しやすアート作品でもありました。アート作品の購入が一般に広がったのはポップアートからです。

結果的にビジネスとしてのアートとして成功します。

5.記号とポップアート

記号性という意味でポップアートのルーツはジャスパージョーンズやロバートラウシェンバーグに代表されるネオダダにあると言われています。しかし彼らの提示した記号性の裏側には美術品に対する認識への明らかな問いかけがあったのに対しポップアートのそれには記号、象徴としてのありのままの意味以外は存在しません。キャンバス上に刷られたマリリンモンローは、切り抜かれた大衆のイメージとしてのモンローです。ここに実像を越えた虚像としての記号性が浮き上がります、膨れ上がった虚像としての対象を美しいと捉えるか醜い物と捉えるかは人それぞれです。ここにポップアートの視点の面白さがあります。

6.ポップアートの代表作家

最後に代表的な作家とその作品を見てみましょう。

アンディー・ウォーホル

1962年 32のキャンベルスープ缶

ポップアートと言えばこの人を思い浮かべる人も多いかと思います。ウォーホルはデザイナーからアーティトに転身、ファインアートの世界に大量生産、イメージの複製など商業デザインの考え方を持ち込みます。この作品はアメリカのスーパーや家庭の食卓どこでも見かけるキャンベルスープ缶をモチーフに使った作品です。32という数は当時発売されていたスープの味が32種類であったことに紐づけられています。シルクスクリーンの複写技術とアクリル絵の具を用いての手描きで制作された、複製とオリジナルの組み合わせによる独創的な作品になっています。

ロイ・リキテンスタイン

1963年 crying Girl

リキテンスタインは新聞に描かれてた大衆漫画をモチーフに作品を制作。拡大した漫画のイメージや機械的な印刷による細かいドットを手描きでさ再現した非常に面白い作品です。リキテンスタインは漫画を題材にした事を「それは絵のように見えるのではなく、物そのもののように見える」と語っています印刷物を拡大した時に見えるドットをそのまま書き込む事により漫画の無機質で機械的な記号性を取り出す事に成功しています。

ジェームズ・ローゼンクイスト

1961年 I love with my ford

ローゼンククイストはコマーシャル、政治、テクノロジー、消費主義、セクシャリティーこれら全てを取り入れたモンタージュ的な作品を制作しました。この作品では国産自動車フォード、菅能的な女性、スパゲティー広告に見られる消費文化的イメージの拡大により膨れ上がる消費主義への見解を示しています。

ポップアートとは何なのか?

ポップアートの登場によって新しい手法や考え方がファインアートの世界に持ち込まれました。確かに魅力の一つではあるのですが物理的側面とは別に考えた時のポップアートとはいったいなんだったのでしょうか、ポップアートは当時の人々が世界をどう見ていたか、この時代をどう見ていたかだと思います。誰でも解るイメージの先に美しさ、豊かさ、憧れの象徴と取るか、それとも醜く嫌悪する物と考えるか人それぞれだと思います。そこには鑑賞者そして作家それぞれの視点があります。戦後の復興と経済成長、大量生産と消費社会50年代と60年代に生きた人々が社会をどう見つめ考えたのかそれを色濃く反映したアート、それがポップアートだったのではないでしょうか。

Yuki Izumi


アンディー・ウォーホル
ロイ・リキテンスタイン
ジェームズ・ローゼンクイスト