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天然 、ヘタウマ、アンリ・ルソーの魅力!!【美術解説・アーティスト紹介】

天然 、ヘタウマ、アンリ・ルソーの魅力!!
【美術解説・アーティスト紹介】

はい!皆さんこんにちは!
今回YouTubeチャンネル「ExpotionTV」ではアンリ・ルソーを取り上げました。
動画を見て無い方は是非ご視聴お願いします!良かったらチャンネル登録もしてくれたら喜びます!!

ルソーは後に素朴派と呼ばれる画家たちの中で最も有名な画家です。
技術的に優れてはいませんがヘタウマ的な魅力があり大変面白い人物です。
今日はルソーの人物と作品の魅力に迫ります。

略歴年表 Story of Henri Julien Félix Rousseau

1844年フランス北西部のラバルで生まれる。
両親は芸術にはまったく興味がありませんでした。
ルソーは後に天才として当然受けられるはずだった教育を受けられなかったと嘆きます。
ちなみに彼が神童であった事を思わせる記録は何も残っていません。

美術教育を受けられなかったルソーは、田舎の法律事務所の事務員という退屈な仕事に就きます。
しかし数ヶ月後に切手を盗んだ罪で禁固刑になります。

1863年歩兵隊に入隊
何とか信頼を取り戻したいと考えたルソーは歩兵隊に入隊します。
軍事行動で行ったメキシコ遠征で得たジャングルの記憶がルソーが描いた
一連の森の作品のイメージの源泉になったと本人は語っています。
ですがこれは嘘で平凡な軍隊での経歴を取り繕ったのだと思われます。
実際にメキシコには行っていません。

1869年クレマンス・ボワタールと結婚。
長く幸せな時間を過ごしますが、7人いた子供のうち
5人を結核で失う不幸にもみまわれました。
1888年にはクレマンスも死去してしまいます。

1871年税関で働き始める。
仕事は特に難しい物ではなく、余暇や休日を使って絵を描き始めます。
上役達はけして難しい仕事をルソーに与える事はありませんでした。
これが彼の考えた通り絵の才能を認められての物なのか、単なる能力的な問題だったのかはわかりません。
ちなみに彼のニックネーム税関史ルソーはここからきています。

独学ではありますがルソーは自分の芸術的才能を信じていました。
自分の作品の意見を聞かせて欲しいと思う芸術家達に積極的に近づきます。

1885年初めて作品を公開。
2点の作品をアンデパンダン展に出品しますが評価は散々な物でした。

1889年パリ万国博に夢中。
悲観に暮れたルソーでしたが、この時に開催されたパリ万博で観た異国の文化が彼を夢中にさせます。

1893年役人を辞め絵に専念。
公的な評価はあいかわらず酷い物でした。
この頃から自分の作品がゴーギャンやピカソ、マティス等の前衛芸術家達に評価されているのを知ります。

1899年ジョセフィーヌと結婚。
しかし4年後にまたしても妻を失うことになります。

1907年詐欺罪で逮捕される。
ある知人に偽名の口座を開く様に頼まれます。
人間を疑う事を知らないルソーはこれに協力してしまいます。
しかし有罪になりそうなルソーを作品が救います。
彼の素朴な作風が性格、精神性を示す証拠として提出されます。
これが「彼の行動は子供と同じようなものだ」という証明になり罪を免れます。

1908年ピカソがルソーを讃えるパーティーを開催。
パーティー自体はパロディー的なおふざけ部分が多かったらしいのですが
ルソーはようやく画家として認められたと感じます。

1910年パリで死去
治療していなかった足の傷が壊疽、パリの病院で息をひきとりました。

というのがプロフィールです。

とにかく天真爛漫で子供の様に無邪気です。
天然、空気を読まない迷惑な人物でもありましたが、人を疑わない純粋な部分もありました。
仲間うちからはよくからかわれていましたが、愛されるキャラでもあったんじゃないかと思われます。

素朴派とは何か

ナイーブアートと呼ばれます。

独学で遠近法、構図を考慮せずちょっと変わった作風が特徴です。
趣味で描いてる人が多いのも特徴です。

素朴な芸術というのは民芸なので以前からありましたが
独特で新鮮な感じが20世紀になって評価された表現形態です。

日曜画家 ルソー

画家とモデル

画家として初めは日曜画家からはじまります。
遠近法もぎこちなく、人物もけして伝統的技法の訓練を受けてないのがわかります。
普通は訓練すればいいんじゃないかと思うのですが、ルソーは早々に諦めます。

画期的な手法

1895年 岩上の少年

絵画の複雑な技法が困難だと考えたルソーは様々な手法を試みます。
顔を描くののが難しいと思ったルソーは、筆の柄の部分でモデルの目、鼻、口の大きさを計り
遠近感をまったく無視して実物通りの大きさを写していました。
また肌色を得る為に、絵の具のチューブをモデルに向かってつき突けたりもしました。
これにより反自然主義的な不思議な人物象が出来上がります。

植物が大好き

1907年 夢

ジャングルの絵は代表的な題材です。
遠近法がもっとも困難だったルソーは距離感を出す為に画面を植物で覆って
人物や動物の身体の一部を草で隠して距離を説明しています。
また足を描くのが苦手だったルソーにとって植物はうってつけのモチーフでした。

シュールレアリスムを先取り

1897年 眠れるジプシー女

夜の砂漠で寝ている女性に夢中になっているライオンの図という特異で不可解な絵です。
この絵はフロイトの研究者達に分析され、後のシュールレアリスムに繋がる作品の一つと考えられています。

ルソーさんの観た夢じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。

ルソーの魅力

ルソー自身は自分は写実画家であり、過去の写実的な巨匠達に並んで評価される事を望みました。
あくまで古典の極みに近づく為に色々と工夫するのですが、きせずして実験的になってしまいます。
それが結果としてアカデミックな絵画に対するパロディーになりカウンター的な作品を生み出します。
事実として本人としては受け入れがたい結果を作り出す事になってしまいます。

本当は伝統的な人達に評価されたかったのに、最も評価したのが前衛的な画家達だった。
少し皮肉な感じがしますが、面白い現象でもあります。

技術的に上手い訳ではありませんがルソーの絵には不思議な魅力があります。
ルソーの作品は上手い下手では計れないアートの魅力を体現してるのではないでしょうか。

文:Yuki Izumi


画像元:
https://en.wikipedia.org/wiki/Henri_Rousseau